ギグバッグ

五日市街道沿いの古着屋の側で
信号待ちをする若い二人
髪を染め耳には飾りをつけて
背中には安物のギグバッグ
右手で背の小さな恋人の夢を握り
左手で今日殆ど使うことのない機材を持っている

野心をばらまく程の傲慢さはなかったけれど
サンロードには二人の現在が落ちていた
不確かな夢を追うよりも
確実な今を長引かせようと
だって本当に夢を追っているのなら
ライブ小屋に向かう前にクレープを食べるべきじゃない

誰もが彼の真実を分かっている
あろうとなかろうと才能は機能しないことを
その上で不足している覚悟についても
他人を蹴落とせないほどの愛情の深さも
誰も彼にあきらめろとは言わない
僕も彼にあきらめろとは言えない
彼も勿論あきらめようとは思わない
だからすべては苦しいのだろう

しかし君はまだ鋭くあろうとする
割り箸の先にタコ糸で針をくくりつけたくらいには
しかし君はどこかで絶望もしている
立ち向かう相手は風船のようではないと知っているんだろう

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