モザイクという名の男

アクリルの絵の具で弱肉強食の模様を描こうとしてる
俺の名はモザイク生まれは地球内部の何処か
それを知ってどうしようっていうんだ?
幼い頃から自分に才能があることに気付いてしまって
筆をとったのはみんなが鉄棒を回っているあの時
俺の地面もひっくり返った
早熟な俺はそれから毎日飽きる事無く女の裸を書き続けた

目立つ事が大好きな俺は事ある毎に顔中にペイントを施して
生活の事などただの一度も考えずに各地を転々として過ごした
体一つあればどこでだってどうにか暮らしていけるさと
紫陽花が咲けば雨の匂いを感じ取って次は灼熱の摩天楼を目指すのさ
バックパックに詰め込んだのは大そうな物じゃない
くたびれた一枚の古地図とブルーチーズ

炎の国で会った長老はそこにあった樫の木を人間に見立てて
各々首に一つは錨となるようなものをぶら下げておくべきだと言う
ならばと俺は港まで出向いて恋人を一つ見繕って
体を重ねる事も無く藁半紙の上に婚姻の誓いをたてるのさ
案ずる事はないぜ俺は惹かれたもんとは須らく夫婦になってきたのだから

感動的だぜ俺はついに無一文さ
アスファルトなら何処にでも転がってる
相棒は腹の足しにならない愛をせがんでる

こうでなくちゃいけない
儲けなんか要らない
三文芝居だが演じ切ってみせるさ

「随分痩せたみたいね」行きつけだった店の主人はグラスを手に近づいて来た
「水分は欲しくない。代わりに新しい作品を見てくれないだろうか」
「あたし絵心なんて無いから分かるかしら」
「構わない」俺はそう答える
大切なのは俺の絵を誰かが見てる事
安い酒がもたらす悪酔いと同じ様なもんさ

人だかりが出来てバツが悪くなった俺が早々に立ち去ろうとしてると
早撃ちのカウボーイ野郎が近づいてきて俺のあれやこれやを訊ね始めた
「君の絵はとても良いけど売れないな」と訳知り顔のそいつに
俺はこう言うのさ
「このオマンコ野郎俺の手作りのトマトチーズミートパイを食ってもいないくせに」
俺の名はモザイク 明日を決めるダイスはそのミートパイの中に入っているんだぜ

感動的だぜ俺はついに無一文さ
アスファルトなら何処にでも転がってる
相棒は腹の足しにならない愛を
せがんで俺の絵に唾を吐きかける
お天道様は丁度真上にあるようで
冷ややかな目で地上を焼くのさ
ベイビー残念だけど俺はこんな風に
日銭稼いで飲み干してしまうように
暮らしていくしか能のない男さ
アスファルトなら何処にでも転がってる
辿っていけばいつか家に戻れるぜお嬢ちゃん
毎日が吹き荒れるサキソフォンの様に
毎日が吹き荒れるサキソフォンの様にありますように
こうでなくちゃいけない
儲けなんか要らない
三文芝居だが演じ切ってみせるさ

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